Blast om the East
驚かしてすみません、と開口一番、ゆりなは謝罪の言葉を口にした。何かを訊こうとしたMさんも、その言葉で彼氏が嘘を言っていないことを悟って、続ける言葉を急に見失ってしまった。しばしの沈黙が二人の間に流れたが、先輩やっぱり、とゆりなが言って、急に声を潜めた。おそらく近くに他の誰かがいるのだろう。思い描くゆりなの居場所は、Mさんの職場でもあるのだ。
ちょっと待ってください、かけ直します、と云ったきり、一度ケータイは切れた。Mさんが耳からケータイを外すと、足下に寝そべるようによってきてた彼氏が見上げるようにして、目を合わせてきた。嘘じゃなかったでしょ?と言いたげにニヤニヤと笑う。そして、知らない間柄じゃないんだから、とそのままMさんの下半身にまとわりついてきた。その手はもう部屋着のズボンを引き下ろしに掛かっている。
でも、とMさんは彼氏の肩を手で押して拒否しようとしたが、その力はそれほど強くなかった。Mさん自身の淫靡な欲望がアルコールで火照っていただけでなく、ゆりながそれを望んでいる、という事実がMさんを強く突き上げていたのだ。それはMさんの根底にある、自分の身体で誰かが喜ぶ、という願望をそれはしっかりと満たしてくれるからだ。しかも、慕ってくれる後輩の頼みなら、無碍に断るわけには行かない。
ゆりなのいわば申し出は、ある意味お節介ではあったけれど、どこかで精一杯Mさんのことを考えた結論だった。ゆりな自身の焦燥も、そこに見え隠れするが、それを解きほぐすにも、彼女の企みに巻き込まれてあげるのが良いのだろうとMさんは思った。そんなMさんを彼氏はいよいよ覆い被さって押し倒してきた。もう無防備に受け入れたMさんの手で、再びケータイが鳴った。

