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Voice In The Mood

2015.12.31.Thu.09:13

屋に訪れることが日常になっていた顕著な例として、OMさんの部屋に顔を出すと、迎えるMさんはいらっしゃい、と云わずに、お帰り、と云うようになっていた。程なくOもただいま、と応じるようになったのだが、それが特別なことで無く、何がきっかけかも分からないままにお互いに受け入れてしまっていたのだ。いつしか、部屋に訪れた時のルーティーンもMさんの部屋に合わせて固定化していった。

決まってOより早く帰宅するMさんだったが、それからしばらくの時間はほぼOを迎える準備に費やすのが日常だった。一応二人分の食事を用意するが、Oがほとんど外で食事を済ませてくるので、残った一人分はMさんの翌日の昼のお弁当になった。風呂場も寝室も、いつでも利用できるように手早く整えられて、後はOを待つだけとなる。その間、親元では見られなかったような喘ぎに満ちたビデオを見て、時間をつぶすこともあった。

Oの職場からの距離も市内を走る市電一駅程度の距離で、だいたいは歩いてMさんの部屋に来ることが多かった。彼を迎える準備が整って、一息ついたところでだいたいはOからメールが入った。そのメールからどれくらい立てば部屋の呼び鈴が鳴るか、それもいつしか無意識にMさんは把握できるようになっていった。そのメールもほとんど帰るコールに近かったが、時々は残業で遅くなるとか、今日は行けないという用件が入ることもあった。

たとえその日会えなくても、一日を於かずして顔を合わすことは出来るのだから、たまの不在も息抜きにちょうど良かった。そのことに嫉妬をしたり、いぶかしがったりするような年齢でも間柄でも無かったせいもあるが、お互いが身体の関係であることを必要以上に踏み出そうとしない、不思議な抑制が備わっていたのだった。新たな生活がそうやって徐々に日常になっていき、セックスで繋がった二人の関係はそこでよりいっそう濃密なものへと凝縮していったのだった。





阪口輝世 古谷沙織 西春菜







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