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The Lonesome Road

2015.08.14.Fri.02:39

妙に、と言っていいのかどうかわからないが、その時点で覗き窓は完全に段ボールの箱に隠されていた。その箱自体に移動した形跡はあまりなく、埃の多さがもしかするとMさんがここを再訪するまでの年期と同じだけ降り積もっているのかもしれない。Wの指南で、その箱を取り出すと、空いたスペースの壁にしっかりと隙間が開いているのが見えた。以外に開口部が広く、隙間というよりは、覗き窓という方がふさわしかった。

これは偶然に開いたものじゃないな、と傍らから覗き込んだSが云った。確かに、これは目的があって誰かが開けたものだよ、とTが受ける。二人とも推測に過ぎないが、かなり確信めいた口調でそう明言した。Sと場所を入れ替わって覗き込んだ、Mさんもそれに同意した。その結論は、口には出さなかったが、おそらくMさんより以前から休憩室で覗かれるようなことが行われていた、ということを示唆していた。

俺が開けたんじゃないですよ、とWは照れたように云って、また休憩室に戻った。今度は畳敷きの部屋に上がり込んだ。向こうの壁でごそごそやる音が聞こえて、ぱっとその覗き窓が開けて、明るい光が差してきた。向こうからWが覗き込む。隙間だったところがよりいっそう、こちらののぞき窓と繋がって、そうなると完全に部屋の中を見るのに適した開口がなされていた。

後になってヤバイと思って、見えないように俺が隠したんですよ、と向こうから声がする。意外に声はよく通った。あの時はこんな感じでした、というと、覗き窓の下半分が影になった。それでも、明るい向こうは充分に見渡せた。視野は狭かったが、三畳ほどの畳の部屋に座り込むWの姿がちゃんと見ることが出来ていた。TSも、そしてMさんも、こちらから覗いた時の痴態を想像して、その畳の上にそれぞれ浮かび上がらせた。





多度津の花火が見える島 中野信子 バロン辻村








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