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綺麗

2015.07.19.Sun.03:45

憩室の存在を、部員のWはもちろん知っていたし、そこが何に使われているかもわかっていた。W自身、その部屋に泊まったこともあったし、様々な理由で利用していたが、ただ女性を連れ込んだことはなかった。連れ込むことが出来るような女性に恵まれなかったのだ。そのことを忸怩たる思いで省みないこともなかったが、ただ、彼は特別な体験をそこでしたのだった。

元々用具倉庫だったせいで、スペースを確保する為に押しのけられたような物が元々の倉庫には山積みだった。加えて、その間を仕切る壁は本来ある物ではなく、誰かが無理矢理そこに取って付けたような物だった。当然壁としては薄く、自身で存在していると云うより、両側から押さえられた家具で持っているような立て付けだった。それも相当古く、いつ抜けてもおかしくないほど年季の入った壁だった。

ある時、Wが用具倉庫を整理している時に、その壁に穴のような物が開けられているのを見つけた。穴と云うよりは隙間を拡げたようなもので、向こう側にある家具を巧妙に使って目立たないようにしてあるが、明らかにそちらを覗く目的で作られた人為的な穴だった。丸い穴が隙間無く横に細く並べられていて、ちょうどしゃがんで見るのによい高さにそれは開けられていた。

その目的が何であるか、何を覗こうとしていたのか、頭のよいWにはすぐに理解できた。休憩室でセックスするのは、噂に紛らわせていたが、ほぼ間違いなく皆に知られた公然の秘密だったのだ。その事実を覗き見たくなるのは当然の結果だろう。だが、その覗き窓については、噂にも聞いたことがなかった。Wはその偶然を貴重な物と感じて、自分だけの秘密にしてしまったのだった。





石田桜子 バロン辻村 大友美里







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