Walk Straight Down the Middle
待ち合わせのために事務所に戻るのか、予約しているホテルにもう向かった方がいいのか、決めかねた二人は街をブラブラとすることにした。お互いに知り合いに会うのを避けるために、自然と閑散とした通りを選ぶようになったが、元々平日の夜に賑やかな街ではない。それでも気がつくと、裏通りにぽつんとある小さな公園に辿り着いていた。Mさんは後輩の思惑を察したが、それは全くの思い過ごしだった。どちらの意思も関係なく、ただの偶然だった。
酔い覚ましを兼ねて、二人はそこにあるベンチに座った。公園の隅には公衆トイレがあって、そのために広場をとったような公園だったが、一応花壇には盛大に向日葵が茂っていて、遊具の類いもいくつか備えられていた。小さいながら砂場もあって、忘れ物なのか鮮やかな色のバケツとスコップが放置されていた。辺りを見回すとマンションが多いようで、通りを外れている内に住宅街に紛れ込んでしまったらしい。
予約したホテルはもう少し市街にあったが、アーケードのある商店街の真ん中にある。二人が落ち着いた公園からホテルと事務所とでは、同じぐらいの距離にあった。どちらへでも赴けるちょうどいい場所でもあったのだ。ベンチに座ると、後輩は気を利かせて近くの自動販売機を探して飲み物を買ってきた。いくらか酔いが回って体温が上がっているMさんに、冷たいスポーツドリンクは心地よかった。
夜風に当たりながら、Mさんは空を見上げ、後輩はOにメールを打っていた。彼の思惑としては、もうホテルに入りたかった。さっきのリベンジもあるし、アルコールが淫靡な空気をいっそう濃くしていたのだ。それはMさんの方に顕著で、足取りの覚束なさに紛れて後輩に身体を寄せ続けていたのだ。まだ後輩はMさんの裸体を見ていない。Oの見せた画像が頭に強く残っていて、それを早く現実にものとして見たかった。先に始めている、と半ば決心したことをOに伝えるために、後輩は忙しなくメールを打っていたのだった。

