Cactus Tree
弁当を入れてきたバッグの中から、Mさんは弁当だけでなく栄養ドリンクを取りだした。疲れているでしょうから、とMさんはそれを途中でコンビニに寄って買ってきたのだ。体調を気遣ったようで、だが今の二人にはそれが多少精力剤の意味も隠っているように受け取っていた。Mさんはそう誤解されることを予想し、Oはそのまま弁当を食べた後のことを想像した。すでに勃起は食欲を上回っていた。
二人で弁当を食べながら、その休憩室を見回したが、さっきの事務所よりは更に殺風景で、あまり綺麗な気はしなかった。剥き出しのコンクリートは経年劣化で薄汚れていて、そこをほんのりとした芳香剤が埋めていた。シンク周りにはきっと、女子社員の手が入っているのだろう、ある程度の清潔さが整然と並んでいたが、それ以外はどこか無骨な雰囲気が漂っていた。男での多い職場では、どこも同じ様なものだとMさんは思った。
長テーブルの向こうには壁に押しつけるように古ぼけたソファが置いてあった。徹夜する時はそこがベッド代わりになるんだ、とOは笑いながら説明した。そのことを裏付けるように、ソファの肘掛けの向こうに小さな棚があり、その一番上には安物の目覚まし時計が置かれてあった。その下にはマンガや雑誌が無造作に積まれてあった。専門書のようなもの見えたけれど、Mさんにはよく分からない。
今日もそこで眠る予定だったの?とMさんが訪ねると、そういうつもりはなかったよ、とOは応えた。あっという間に食べ終えた弁当箱を片付けながら、コレのおかげで意外に仕事が早く済んだから、とOが付け加える。その意味を計りかねたMさんの表情に向けて、君を迎えるためにスパートが掛かったんだよ、と笑う。そして、助かった、と一言添えるとその言葉を潮にMさんの手を取って引き寄せた。そして、待ちかねたように唇を重ねたのだった。

