Happy Ending
転居して、いっそうゆりなと親密になり、お互いに秘めた部分まで見せ合う関係になると、その噂はいっそう現実味を帯びていた。ゆりなのセックス観が、人並み外れて奔放で貪欲であることが噂を裏付けるような気がMさんにはしていた。ゆりなならやりかねない、と思わずにはいられないのだ。それでも信じたくない、という感情はどこかに残っていて、そのせめぎ合いは時々、Mさんを困惑させた。
もっともMさんも現役の頃、クラブ内恋愛というのは盛んだったし、彼女本人も経験がある。クラブを閉めた後に施設の中で男と交わった経験すらある。ただ、ゆりなの噂と違うのは、そこにお金のやりとりが関わっていなかったことだ。どちらが純粋なのかは判らないが、少なくともMさんは肉欲を満たすための行動に過ぎなかったのだ。男と交わることのみを目的として、たまたまその場所が職場だった、というだけだった。
転居してクラブに復帰して、内実が現役の頃とそう変わらないことを知って、もっともゆりなに対して懸念だったのは、その派手さにあった。インストラクターという特殊な職業に就いていても、まだ社会に出て長くないゆりなの懐具合はしれている。Mさんも通り過ぎてきた経験だけに、それがどれほどのモノか容易に予測は出来ていた。特別な職業とは行っても、不景気の煽りをまともに受ける職種でもあったのだ。
だが、それにしては持ち物や服装が目立っていた。ゆりな自身がそれをひけらかすわけではないが、ブランドモノの持ち物を普通に抱えていたり、アクセサリーも高級そうな装飾が目立った。服装はいつも上から下まで同じモノを見たことがなかったし、特にMさんには下着の豪華さに目を奪われた。二十代の女性が身につけるモノにしては、手触りから装飾まで数ランク上のモノばかりで、Mさんでさえ手が届きそうにないものばかりだったのだ。

